腰痛(ギックリ腰)の判別&鍼灸治療「筋肉由来で考えたケース」

脊柱起立筋への鍼灸治療

ぶっちゃけ鍼灸師

こちらでは、「筋肉由来で起こる」腰痛(ギックリ腰)判別法&鍼灸治療についてまとめました。
筋肉以外から起こる腰痛には、触れておりませんのでご了承ください。
注意
兆候の他に、鍼灸治療もまとめましたが、深鍼(中国式)について記載しております。
深鍼は、鍼灸学校では習わないため、必ず、誰かの師事を受けてから行ってください。

1:大腰筋からくる腰痛(ギックリ腰)

大腰筋 図説

ぶっちゃけ鍼灸師

大腰筋が固くなっているために、慢性的な腰痛を起こしているケースです。
大腰筋の急激な痙攣が起こると「大腰筋由来のギックリ腰」となります。

a:兆候

ポイント
・前屈(-)後屈(+)
長時間座ってから立ち上がる際に痛む(特にソファーだと顕著)
仰向けに寝ると腰が痛い(横向きは大丈夫)
・腰の鈍痛(ギックリ腰はのぞく)
・患者自身も、ピンポイントで痛む場所を指し示すことが難しい
・くしゃみ・咳をすると、腰の深部に響く(ギックリ腰の場合)

b:鍼灸治療

大腰筋刺鍼の図説

ポイント
・2寸5分~3寸(5番・8番)辺りを使用
腰椎棘突起間より、外方4~5cm・深部5cm~10cm
腸・腎臓を刺す可能性もあるので、必ず訓練を積んでからにしてください。
大腰筋刺鍼については、こちらの記事で詳細を書いています。

2:脊柱起立筋からくる腰痛(ギックリ腰)

胸最長筋と腰腸肋筋

ぶっちゃけ鍼灸師

脊柱起立筋が固くなっているために、腰痛を起こしているケースです。
脊柱起立筋の急激な痙攣が起こると「脊柱起立筋由来のギックリ腰」となります。
(※ここでいう脊柱起立筋とは、主に「胸最長筋」「腰腸肋筋」を指します)

a:兆候

ポイント
・前屈(+)後屈(-)
・浅層にある筋肉なので、圧痛があります。
胸痛・胃痛がある場合も(胸椎の神経を圧迫するため)
腰と背中の境目が痛みやすい(Th12付近)(とくにギックリ腰)
・慢性になると上後腸骨棘に痛みがでる(慢性化により停止部が痛む)

b:鍼灸治療

脊柱起立筋への鍼灸治療

ポイント
1寸3分~2寸(3番)辺りを使用
第7~第12胸椎の棘突起の外方2cm
(深さは横突起に当たるまで)
(45°傾けると横突起に当たる)
(棘突起ではなく、棘突起の外方を狙うのは、横突起に当てやすいため)
腰椎棘突起間の外方3cm(深部は肋骨突起)
正中仙骨稜の外方2cm(仙骨に当たるまで)
※痛む側だけでもよい
気胸の可能性があるので、必ず訓練を積んでからにしてください。

3:多裂筋からくる腰痛(ギックリ腰)

多裂筋

ぶっちゃけ鍼灸師

多裂筋が固くなっているために腰痛(だるさ)を起こしているケースです。
多裂筋の急激な痙攣が起こると「多裂筋由来のギックリ腰」となります。

a:兆候

ポイント
・前屈(+)後屈(動き始めに+)
腰の下部中央に痛み(L4~L5付近)
・腰椎棘突起のキワが痛む
・椅子に座っている際に痛む
起床時に痛むが、動いているうちにラクになる
・歩き始める「瞬間」、立ち上がる「瞬間」、前屈姿勢から体を起こす「瞬間」に痛む。
【慢性の場合】
・「だるい」という表現が多い
長時間立っていると腰がだるくなる・椅子に座りたくなる
・棘突起上が痛い(脊髄神経後枝からの皮神経が過敏になっている)

b:鍼灸治療

ぶっちゃけ鍼灸師

「脊柱起立筋からくる腰痛」と同じ治療法でOK。

【増強法として】

多裂筋の鍼灸治療

増強法のポイント
腰椎棘突起のスレスレから、一つ下の腰椎に向けて「骨の表面をかすめるように刺鍼
(刺激量が強いので注意)
【それでも緩まない場合】
・拮抗筋となる「大腿二頭筋」を緩める
・協調筋となる「腹横筋」を緩める

4:腰方形筋からくる腰痛(ギックリ腰)

腰方形筋

ぶっちゃけ鍼灸師

腰方形筋が固くなっているために腰痛を起こしているケースです。
腰方形筋の急激な痙攣が起こると「腰方形筋由来のギックリ腰」となります。

a:兆候

ポイント
・前屈(動き始めに+)後屈(動き始めに+)
・腰の外側が痛む
・くしゃみ・咳で痛む(呼吸補助筋なので)
・脇腹から腰に向けての圧痛がある
・腰が「痛む側に」傾いていることがある
・腰をひねる動作側屈が主に痛む(ゴルフのスイングなど)
・(ギックリ腰の場合)薄い筋肉なので動けないほどではない

b:鍼灸治療

腰方形筋刺鍼
腰方形筋刺鍼の断面図

ポイント
・伏臥位or側臥位どちらでもよい
2寸5分(8番)辺りを使用
(細い鍼を使用すると、鍼の先が内部で曲がりやすく腎臓に向かう危険があるので使わない)
・腰方形筋と平行に刺入(鍼に多く触れたほうが効果が高い)
胸腰筋膜から背骨に向けて刺入(そのまま大腰筋を狙ってもよい)
【なかなか治らない時】
反対側の中殿筋を緩める(拮抗筋なので)
同側の大腰筋小殿筋を緩める
(第3腰神経の走行が「大腰筋」-「腰方形筋」-「小殿筋」となっており、神経絞扼による関連痛と考える)

5:中殿筋・小殿筋からくる腰痛(ギックリ腰)

中殿筋・小殿筋

ぶっちゃけ鍼灸師

中小臀筋が固くなっているために腰痛(腸骨稜付近)を起こしているケースです。
中小臀筋の急激な痙攣が起こると「中小臀筋由来のギックリ腰」となります。

a:兆候

ポイント
・立っているとラクだが、椅子に座ったり、しゃがむと痛む
・中小臀筋部の圧痛がある
・体が「同側」に傾いていることが多い
看護師・介護士に多い(病人の移乗など、片足で力をいれるため)

b:鍼灸治療

中殿筋の鍼灸治療
小殿筋の鍼灸治療

ポイント
2寸5分(5番)辺りを使用
・起始~停止に向けて、筋肉に沿わすように刺鍼します。(斜刺)
(鍼に多く触れたほうが効果が高い)
・小殿筋は深部にあるので、腸骨もしくは、大腿骨頭付近の骨に当たるくらいでよい。
(停止部「大腿骨頭」をめがけて刺すので、安全ですが、坐骨点あたりから垂直に深鍼すると内蔵の方に向かうので注意してください)

最後に

ぶっちゃけ鍼灸師

こちらでは「筋肉由来の視点」で、腰痛をまとめてみました。
漠然と、腰の鍼灸治療を行うよりも、筋肉からみていったほうが、治療効果は高まると思います。

また、腰椎椎間板ヘルニア・腰椎脊柱管狭窄症・腰椎すべり症などでも、上記の分類にあてはめて筋肉を緩めてあげると、症状・痛みが改善する方が多いです。
ぜひ、参考にしてください。

※何度も言いますが、深鍼を行う際は、必ず師事を仰ぎ、訓練を積んでからにしてくださいね。